刀 片山一文字(無銘)
(かたやまいちもんじ)
Katana:Katayama Ichimonji(Mumei)
古刀・備前 鎌倉中期~末期
第五十三回重要刀剣指定品(平成十九年)(二〇〇七)
探山先生鞘書き有り
刃長:73.1(二尺四寸一分強) 反り:1.4 元幅:3.24
先幅:2.39 元重ね:0.73 先重ね:0.59 穴3
鎬造り、鎬高く庵棟低い、大切っ先鋭角となる。 表裏共に棒樋を掻き通す。 鍛え、小板目肌極めて精緻に詰み、地沸微塵に厚く付き、地色明るく、細かな地景繁く入り、乱れ映り判然と立ち、地鉄最良。 刃文、丁子乱れを主体とし、小丁子、小互の目、尖り風の刃を交えて乱れの間隔近く、焼きに高低があり、僅かに逆掛かり、刃縁匂い勝ちに小沸付き、明るく締まって良く冴え、刃中葉、足繁く入る。 帽子、小乱れ調で、先僅かに掃き掛け返る。 茎大磨り上げ、先僅かに刃上がり栗尻、鑢切り。 銅に金着せ二重ハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。
【コメント】
片山一文字(無銘)の重要刀剣、乱れ映り判然と立つ最良の地鉄、健やかで明るく冴え渡る焼き刃、力感溢れる姿、何とも素晴らしい一振りです。
片山一文字派は、福岡一文字助房の子と伝わる則房が、後に片山の地に移住したことからこの呼称があります。古来より片山の地を備中片山、現在の岡山県総社(そうじゃ)市地頭片山としていましたが、近年では備前福岡近辺の片山、現在の岡山県瀬戸市邑久(おく)町下笠加(しもがさか)が有力視されています。
則房は、同派の祖として国宝二口、重要文化財一口、重要美術品七口を数え、在銘現存作は太刀のみ、また古来より薙刀の名手とも伝えられています。無銘極めの片山一文字に薙刀、薙刀直しが多いのはこのためです。
作風は、福岡一文字助真、吉房に類する華やかな丁子乱れの他に、地沸が微塵に付いて強く冴えたもの、逆心の刃が目立つもの、小模様な丁子乱れのものなどがあり、刃中の足が細かく入り、刃縁が良く冴える点も見所です。
本作は平成十九年(二〇〇七)、第五十三回の重要刀剣指定品、寸法二尺四寸一分強、大切っ先鋭角となり、反りやや浅め、元先身幅の差が少ない力感溢れる姿は、樋が掻き通してありますが、地刃健やかでズシッと重いです。
このスタイルからして、元来は三尺を優に超える大太刀であったことが分かり、刀身中央付近の棟には、ズバッと深い刀疵も残されています。
小板目肌極めて精緻に詰んだ最良の地鉄は、地沸微塵に厚く付き、地色明るく、細かな地景繁く入り、乱れ映りが判然と立っています。丁子乱れを主体とし、小丁子、小互の目、尖り風の刃を交えた刃文は、乱れの間隔やや詰まり、焼きに高低があって僅かに逆掛かり、刃縁明るく締まって良く冴え、刃中葉、足が繁く入っています。この地鉄の強さと美しさ、焼き刃の柔らかさと明るさには驚きます。
研ぎも素晴らしく、同派の特色と美点が存分に示されています。
探山先生鞘書きには、『姿態豪壮で妙なる鍛錬を見せ、また華麗なる丁子乱れを焼き、乱れ映りを鮮やかに現すなど、出来見事也。一文字諸流の中でも、地鉄が強く冴える点にこの派の見所の一端を表示せり。同派極めの中にあって出色の出来映えである。珍々重々。』とあり、図譜には、『良く練れて詰んだ精美な鍛えが特筆される一口で、地刃共に冴えて出色の出来映えを表しており、加えて幅広、大鋒の大柄な姿態は堂々として、手持ちが重く、頑健である。』とあります。
昭和二十六年三月の古い登録証は、鹿児島登録『第七二二号』、大変魅力的な片山一文字、これは見逃せません。