剣 大和古剣(無銘)
(やまとこけん)
(附)朱塗輪宝文金具散三鈷柄剣拵
Ken:Yamato Koken(Mumei)
古刀・大和 南北朝期
第三十六回重要刀剣指定品(平成二年)(一九九〇)
刃長:32.5(一尺七分強) 反り:なし 元幅:2.66 元重ね:0.74 穴2
両鎬造り、鎬高く、身幅広め。 表裏に鎬樋をハバキ下で掻き流す。 鍛え、小板目肌に柾流れを交えて良く詰み、地沸微塵に厚く付き、ほのかに沸映り立ち、細かな地景良く入り、地鉄概ね精良。 刃文、直湾れ調で、刃縁良く沸付いて匂い深く明るく冴え、ほつれ、打ちのけ、二重刃頻りに掛かり、刃中金筋、砂流し烈しく掛かる。 帽子、直調で先焼き詰める。 茎生ぶ、先切り、鑢不明。 金無垢ハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。
朱塗輪宝文金具散三鈷剣拵(江戸期 全長48 鞘 朱塗の呂に四分一地容彫金象嵌輪宝紋張 こじり、真鍮地に毛彫菖蒲の葉に輪宝紋 責金、吊り金具、鯉口金具は赤銅研磨地に毛彫雲模様、金の覆輪 下げ緒、四色細下げ緒 柄 堅木に菖蒲の葉の毛彫、目釘部分に金の輪 縁、赤銅地毛彫雲模様、金輪宝紋据 頭、真鍮地毛彫菖蒲の葉に輪宝紋 鍔 真鍮地鉤形、毛彫菖蒲の葉)付き。
【コメント】
大和古剣の重要刀剣、南北朝期らしい堂々たる姿、朱塗輪宝文金具散三鈷柄剣拵と共に重要指定された珠玉の名剣です。
剣の作例は、古くは平安期より見られますが、これらは勿論実戦用ではなく、御神体、仏像の持ち物、仏教的な魔除けの器としての意味合いが強く、政(まつりごと)のための特注品でもあったため、武士よりも僧侶に好まれました。ほぼ無銘作で、東大寺や興福寺などの大寺院を始め、数多くの寺院に抱えられていた大和鍛冶の遺作が多く見られますが、南北朝期を下らない現存作は僅少です。
本作は、平成二年(一九九〇)、第三十六回の重要刀剣に指定された大和古剣で、付属の『朱塗輪宝文金具散三鈷柄剣拵え』と共に指定の優品です。
因みに、日刀保鑑定で『大和古剣』と極める場合、南北朝期を下らない作に限られ、室町期以降の作は、『古剣』とのみ表記されます。
寸法一尺七分強と大柄で身幅もしっかりとしたスタイル、図譜にも、『この剣は、身幅が広く、寸が延びて堂々した姿である。地刃に大和風が顕著に現れ、健全で出来が良く、南北朝時代を下らぬ作である。』とあります。
通常古剣は、八寸前後が多いかと思われますが、本作はふた回り程大きいので、何とも迫力があります。
地刃も古作大和物らしい出来、多彩で烈しい沸の働きが随所に見られ、且つ重要刀剣ですから、状態も万全です。
特筆すべきは外装、剣のオリジナル外装、且つ江戸期の作で、これくらい状態良く保存されたものも珍しいです。
本作は、内外セットで一つの作品、ハバキも金無垢、これは満足出来る大和古剣、強くお薦め致します。