薙刀直し脇差し 加州真景(無銘)
(かしゅうさねかげ)
Wakizashi:Kashu Sanekage
古刀・加賀 南北朝中期
第六十三回重要刀剣指定品(平成二十九年)(二〇一七)
探山先生鞘書き有り
刃長:48.3(一尺五寸九分強) 反り:0.8 元幅:2.86 元重ね:0.70 穴1
薙刀直し造り、鎬すこぶる高く庵棟高め。 鍛え、板目に杢目、流れ肌を交えて良く詰み、所々上品に肌立ち、地沸厚く付き、地景良く入り、地斑風の映り立ち、地鉄精良。 刃文、互の目、小互の目、丁子風の刃、小乱れ交じりで、刃縁強く沸付いて匂い深く、ほつれ、打ちのけ、湯走り頻りに掛かり、刃中金筋、砂流し烈しく掛かる。 帽子、湾れ込んで沸付き、先烈しく掃き掛け焼き詰める。 茎大磨り上げ、先切り、鑢勝手下り。 銅に金着せ二重ハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。
【コメント】
加州真景の重要刀剣、地刃冴え渡る薙刀直し脇差し、師と仰ぐ則重に比肩する凄まじい沸の変化を示した代表作です。
加州真景は、古来より越中則重の門人と伝えられますが、則重には正和(一三一二~一七)、元応(一三一九~二一)の年紀作があるのに対して、真景は貞治(一三六二~六八)年紀であり、年代的にやや開きがあることから、直接的な指導ではなく、間接的に影響を受けたとものと考えられています。また一説によると、江義弘門下とも云われますが、これも則重と同様です。
作風的には、則重風を最も良く継承した刀工として認知されています。
同工の在銘品は極めて少なく、重要文化財指定品で、『賀州住真景 貞治六年月日(一三六七)』の短刀が有名ですが、これ以外には短刀、寸延びの平脇差しが二、三振りある程度、太刀は皆無です。銘は『藤原真景』、『賀州住真景』などと切ります。
本作は、平成二十九年(二〇一七)、第六十三回の重要刀剣指定品、『加州真景』と極められた薙刀直しの菖蒲風脇差しです。
寸法一尺五寸九分強、鎬高く、上品な姿で、地刃すこぶる健全な優品です。
板目に杢目、流れ肌を交えて良く詰んだ精良な地鉄は、地景良く入り、地斑風の映り立ち、互の目、小互の目、丁子風の刃、小乱れ交じりの刃文は、刃縁強く沸付いて匂い深く、ほつれ、打ちのけ、湯走り頻りに掛かり、刃中金筋、砂流し烈しく掛かる出来です。
まま見る無銘極めの真景は、地刃に野趣があり、鉄色が黒みを帯びるなど、北国物特有の肌合いを示すものが多いですが、本作は一見して鉄質の良さに目を奪われます。
幅広で豪壮な薙刀直しの姿ではありませんが、地刃がすこぶる健全で、刃の変化が凄い、且つ地刃に何とも言い難い品格があります。
無銘の脇差しは中々重要刀剣になりませんが、これは文句なしです。
図譜には、『本作は、北国物特有の肌合い 焼き刃が良く沸付き刃縁の働きが実に豊かな出来口 渋みの中にも覇気を感じさせ 如何にも則重伝を継承した作であることが明確に示された出来映えである。』とあります。
昭和二十六年三月の古い登録証は三重県登録、ここ数年で見た真景極めの作では、群を抜いて良く出来ています。
これは満足出来る一振りです。