太刀 宇多国房(生ぶ無銘)
(うだくにふさ)
Tachi:Uda Kunifusa
古刀・越中 南北朝期
第三十九回重要刀剣指定品
刃長:78.6(二尺五寸九分強) 反り:3.5 元幅:3.34 先幅:2.12 元重ね:0.79 先重ね:0.50 穴2
鎬造り、鎬高め庵棟め、中切っ先。 鍛え、小板目詰んだ精良な鍛えは、僅かに流れ肌を交えて、地景が細やかに良く働き、柔らかな沸映り立ち、地沸良く付き、地鉄精良。 刃文、細直刃調の刃文は、小互の目、小乱れを交えて、刃縁に美しい小沸付き、ほつれ、打ちのけ、二重刃風の沸筋が見られる。 帽子、焼き低く、大丸風となり返る。 茎生ぶ、先浅い栗尻、鑢勝手下がり。 銀廿ハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。 c 【コメント】
宇多国房(生ぶ無銘)の重要刀剣太刀、南北朝期とは思い難いこの重量感、一般的な古宇多物とは一線を画す名品です。
越中国宇多一派は、鎌倉末期の文保(一三一七~一八年)頃に大和国宇陀郡より越中国宇津に来住したと伝わる古入道国光を初祖とし、南北朝期には古入道の子とされる国房、国宗、門下の国久、国次、友次らが活躍、以後同銘が継承され、室町時代には北陸道最大流派として栄えました。南北朝期を下らない作を古宇多、それ以降を宇多と総称しています。
作風は、その出自とされる大和風の強く現れた直刃調に小乱れ交じる出来を主体としますが、中には焼き幅広く互の目を主体に角掛かる刃、小湾れを交えた烈しい相州伝風乱れ刃もあり、それはさながら越中の名工である江、則重を思わせるものです。
本作は生ぶ無銘の大太刀、寸法二尺五寸九分強、切っ先延び心で反り深く、南北朝期の堂々たる太刀姿を示しており、極めでは『宇多国房(時代南北朝)』と個銘、時代まで明記しています。
国房は銘鑑等では初代を康安(一三六一~六二年)、二代を応永(一三九四~一四二八年)頃とし、以降室町末期に掛けて同銘後代の名が挙がっていますが、本作はその極めより、流祖古入道国光の子と伝わる初代国房の貴重な現存作です。
同派中最も卓越した技術を示す刀工と言えば、迷わず国房の名が挙がる程、国房の技量の高さは、識者の間でも古くから認められていることであり、同派の作で重要美術品に認定されている4口全てが国房の作であることも、それを如実に物語っています。
小板目詰んだ精良な鍛えは、僅かに流れ肌を交えて、地景が細やかに良く働き、柔らかな沸映り立つ地鉄、細直刃調の刃文は、小互の目、小乱れを交えて、刃縁に美しい小沸付き、ほつれ、打ちのけ、二重刃風の沸筋が見られます。焼き刃は元々低いですが、染みるような箇所もなく、地刃が健やかです。
一度手に取って頂ければ分かりますが、南北朝期の太刀で樋が入ってこの重量感は信じ難く、健全な新々刀のようにズシンときます。
地鉄に北陸物特有の黒みが少なく、とにかく地刃が明るく冴えており、国房の類い希なる鍛刀技術が存分に示された優品です。
一般的な古宇多物の概念が覆されること間違いなし、素晴らしい宇多国房の生ぶ太刀、これで在銘なら大変なことになるでしょう。これは名品です。