刀 長曽祢虎徹入道興里
(ながそねこてつにゅうどうおきさと)
Katana:Nagasone Kotetsu Nyudo Okisato
新刀・武蔵 江戸前期
最上作 最上大業物
『虎徹大鑑』所載品
特別保存刀剣鑑定書付き
薫山先生鞘書き有り
刃長:69.5(二尺二寸九分) 反り:1.0 元幅:3.11 先幅:1.73 元重ね:0.70 先重ね:0.41 穴3
鎬造り、鎬庵棟尋常、中切っ先。 鍛え、板目肌が地沸を厚く付けて細かに肌立ち、特に下半は波状の流れ肌がザングリとした鍛えで、地鉄良好。 刃文、互の目乱れを主体とした焼き刃は、湾れ乱れ、箱掛かった刃、尖り風の刃を交えて、刃縁の沸匂いが厚く付き、焼き頭、刃中に金筋、砂流しが頻りに掛かって、匂い口も明るく冴える。 帽子、湾れ込んで先僅かに掃き掛け長く返る。 茎磨り上げ、先切り、鑢化粧筋違い。 銅に金着せ二重ハバキ。 時代最上研磨。 白鞘入り。
【コメント】
新刀最上作、長曽祢虎徹入道興里による『ハネ乕』銘の優品、最上大業物鍛冶の名に恥じない、覇気みなぎる会心の一振りです。
長曽祢虎徹と言えば、日本刀に余り興味のない方でさえ、一度は聞いたことのある名前、その知名度からすれば、相州正宗、妖刀村正と並ぶ著名工です。
生国は越前、三之丞と称し、元来は甲冑師でしたが、『長曽祢興里入道乕徹 本国越前住人至半百居住武州之江戸・・』と刻された作が残されているように、五十歳(至半百)を過ぎた頃に江戸へ出て、刀鍛冶へ転向しました。
地刃の明るさと冴えは新刀随一であり、作風は、前期は瓢箪刃と称される大小互の目の連なる出入りのある刃文、後期は数珠刃と出入りが少ない頭の丸い互の目が主体となります。言わずと知れた最上大業物鍛冶であり、金象嵌截断銘の入った作、巧みな彫り物も極稀に見られます。
その師に関しては、作風、茎仕立てなどからしても、和泉守兼重が最有力とされ、数珠刃は、上総介兼重が得意とした、互の目の連れた刃文に触発されたもの考えられています。年紀作の上限は明暦二年、下限は延宝五年、翌六年没。
虎徹の銘振りは、大まかには、万治三、四年頃から見られる、『虎』の文字の最終画を上部に跳ね上げる『ハネ虎』銘、寛文四年八月から見られる、『虎』の文字が『乕』になる、『ハコ虎』銘に分けられます。
本作はその銘振りからいわゆる『ハネ虎』銘、『虎徹大鑑』所載の優品です。二寸弱磨り上がっていますが、寸法二尺二寸九分、反り浅めに付いた、典型的な寛文新刀スタイル、年紀はありませんが、『虎徹大鑑』にも記載があるように、銘字の書体などからして、寛文二年頃の作となります。
板目肌が地沸を厚く付けて細かに肌立ち、特に下半は波状の流れ肌がザングリとした鍛えで、互の目乱れにを主体とした焼き刃は、湾れ乱れ、箱掛かった刃、尖り風の刃を交えて、刃縁の沸匂いが厚く付き、焼き頭、刃中に金筋、砂流しが頻りに掛かって、一部太い金筋が焼き頭を分断するかのように貫き、匂い口も明るく冴え渡っています。
焼き刃の変化、沸匂いの深み、地刃から覇気がみなぎってくる『虎徹大鑑』所載の『ハネ虎』銘代表作、磨り上げはそれ程気になりません。特別保存の虎徹の刀で、これ位刃が良く出来た作は中々ありません。新刀最上作且つ最上大業物、格の違いを見せ付ける、長曽祢虎徹入道興里の優品です。