脇差し 相(以下折返銘)州住綱廣(三代)
(そうしゅうじゅうつなひろ)
Wakizashi:Soshuju Tsunahiro
古刀・相模 安土桃山期 拵え付き
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:45.5(一尺五寸強) 反り:0.9 元幅:3.23 元重ね:0.63 穴3(内2埋)
平造り、三ッ棟尋常。 鍛え、板目に杢目を交え、所々大模様に肌立ち、地沸厚く付き、地景繁く入り、地鉄良好。 刃文、互の目乱れを主体に、大互の目、小互の目、箱掛かった刃を交え、刃縁小沸付いてやや沈み勝ちに締まる。 帽子、湾れ込んで焼き深く、先小丸風に長く返り、棟寄りを焼き下げる。 茎磨り上げ、先切り、鑢切り。 銅ハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
脇差拵え(江戸後期 全長67.5 鞘 黒の呂鞘 下げ緒、三色斑 小柄欠 柄 親鮫に茶柄巻き 縁頭、四分一研磨地高彫色絵、唐人物図 目貫、赤銅容彫色絵、羽根筆に蛤図 鍔 真鍮地肉彫透、龍図)付き。
【コメント】
山村綱廣一門は、五郎入道正宗以降続く、相州鍛冶の伝統を継承する名門で、通説初代を天文、二代を永禄、三代を文禄から慶長、四代を寛永、五代を万治頃とし、その名跡は現代まで十六代に渡って続いています。
作風は、比較的締まった互の目乱れを主体に、丁子、矢筈、尖り刃、小湾れ、小乱れを交えるものが多く、烈しい皆焼、直調に小互の目交じりの穏やかな作もあります。鍛えは、小板目詰んだもの、板目、杢目の目立つものがあり、倶利伽羅、剣巻龍等々、巧みな彫り物もまま見受けられます。
本作は、『相』以下は折返銘となっていますが、その銘振りからして三代綱廣と鑑せられる一振り、寸法一尺五寸強、三ッ棟、身幅しっかりとした勇壮な慶長新刀スタイルの平脇差しです。
板目に杢目交じりの地鉄は、地景が繁く入ってうねるような鍛えで、互の目乱れを主体した刃は、刃縁やや沈み勝ちに締まっています。
折返銘ながら、特別保存鑑定が付いていることからも分かるように、大きな疵なく、地刃も総体的に健全です。江戸期の良い外装も付属しています。