刀 大和守安定
(やまとのかみやすさだ)
万治三年八月日(一六六〇)
Katana:Yamatonokami Yasusada
新刀・武蔵 江戸前期 良業物
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:75.2(二尺四寸八分強) 反り:1.3 元幅:3.13
先幅:1.82 元重ね:0.66 先重ね:0.40 穴2(内1忍)
鎬造り、鎬高く庵棟尋常、中切っ先。 鍛え、小板目肌やや沈み勝ちに良く詰み、所々板目流れ心に肌立ち、地沸厚く付き、地景入り、地鉄良好。 刃文、互の目に湾れ、小互の目、やや箱掛かった刃を交え、刃縁良く沸付いて匂い深く、刃中葉、足入り、金筋、砂流し掛かる。 帽子、湾れ込んで、先僅かに掃き掛け返る。 茎生ぶ、先栗尻、鑢大筋違い。 銀二重ハバキ(三つ葵紋透かし入り)。 時代研磨。 白鞘入り。
【コメント】
安定は、元和四年(一六一八)、越前の生まれで、名を冨田(飛田とも)宗兵衛と言います。古くは越前下坂系鍛冶とも云われてきましたが、近年の研究では、紀州石堂系鍛冶であることが分かってきました。同派代表鍛冶である土佐将監為康、備中守康廣などと同様に冨田姓であることなどを理由としており、江戸中期の刀剣研究家、鎌田魚妙(かまたなたえ)が記した『新刀弁疑』にも同様の記載があります。その後、慶安元年頃(一六四八)に江戸へ出てからは、和泉守兼重に学んだとする説が有力ですが、同工の作風、茎仕立て、山野家の截断銘などの共通性を考慮すれば、概ね納得出来るところでしょう。
年紀作は僅少ですが、慶安から延宝頃までの作が現存しており、万治頃が大成期とされています。 作風は、湾れに互の目を交えて、湾れが角張るような出来が多く、次いで互の目を主体とした乱れ刃、稀に直刃基調の作も見られます。
本作は、貴重な年紀入り作、万治三年は、同工四十三歳の頃、寸法二尺四寸八分強、反りやや浅め、元先身幅の差がある伸びやかな姿は、典型的な寛文新刀スタイルを示した佳品で、地刃健全、大きな疵もありません。
総体的に良く詰んだ地鉄、互の目に湾れ、小互の目、やや箱掛かった刃を交えた焼き刃は、刃縁良く沸付いて匂い深く、刃中葉、足入り、金筋、砂流し掛かるなど、同工典型的な作域を示した佳品、且つ同工最良期とされる万治打ち、年紀入りとなれば、絶対に見過ごせません。