脇差し 信国(無銘)
(のぶくに)
Wakizashi:Nobukuni(Mumei)
古刀・山城 南北朝末期~応永
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:45.7(一尺五寸一分弱) 反り:0.8 元幅:2.55 元重ね:0.56 穴1
平造り、庵棟低い。 表裏共に幅広の菖蒲樋があり、表は茎途中で掻き流し、裏は掻き通しとなり、樋中に護摩箸を浮き彫りにする。 鍛え、小板目肌やや沈み勝ちに良く詰み、所々流れ肌交じり、地沸良く付き、細かな地景入り、地鉄良好。 刃文、細直刃調で、刃縁匂い勝ちに小沸付いて沈み心に締まり、刃中僅かに金筋掛かる。 帽子、直調で先小丸に返る。 茎大磨り上げ、先浅い栗尻、鑢切り。 銀ハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
【コメント】
信国一派は京鍛冶の名門で、南北朝中期から室町期に掛けて大いに繁栄を見ました。室町中期の筑紫信国、新刀期の筑前信国の流祖でもあります。初代信国は、了久信(了戒の子)の孫に当たり、相州貞宗にも学んでいます。その後南北朝末期頃に、代替わりの信国、更に室町初期には、左衛門尉信国や式部丞信国、いわゆる応永信国が登場します。
作風は、初代には来風の直刃と、貞宗風の沸の強い湾れ刃があり、後代になると、互の目主体の乱れ刃が多くなります。また同派は、代々彫り物を得意としており、初代には簡素な彫りが多く、濃厚な作は、応永信国に多く見られます。
本作は大磨り上げ無銘ながら『信国』と極められた一振り、但し書きに『時代南北朝末期乃至(ないし)応永』とあることから、前述した二代とも言うべき信国の作です。
寸法一尺五寸一分弱、細身のしなやかで上品な平脇差し、生ぶ樋の位置などからして三寸程磨り上がっており、元来は一尺八~九寸程の平身の打刀であったことが想像されます。
平作り打刀と言えば、古くは鎌倉中期の粟田口国吉を始めに、長船兼光、近景、盛景、義景、小反り、吉井一派等、南北朝期の備前系統に若干見られます。
経年による研ぎ減り、鍛え肌も僅かにありますが、京物の伝統を墨守した信国らしい美しい地刃の出来、彫り物も見られる佳品です。