脇差し 三条吉則(生ぶ無銘)
(さんじょうよしのり)
Wakizashi:Sanjo Yoshinori
古刀・山城 室町初期 拵え付き
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長：37.6(一尺二寸四分) 反り：0.8 元幅：2.66 元重ね：0.60 穴2
平造り、三つ棟低め。 棒樋を掻き通し、添え樋をハバキ下で掻き流す。 鍛え、板目に杢目を交え、所々流れ心に肌立ち、地色やや黒み勝ち、飛び焼き風の湯走り交じり、地沸厚く付き、地景入り、地鉄良好。 刃文、小互の目乱れに湾れ交じり、刃縁良く沸付いて匂い深く、刃中小足、葉入り、金筋、砂流し掛かる。 帽子、乱れ込んで沸付き、先小丸風に返る。 茎生ぶ、先栗尻、鑢勝手下がり。 銅に金着せハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
脇差拵え(全長 63 鞘 黒の呂鞘 こじり、赤銅石目地据紋象嵌色絵、菊花唐草図 飾り金具、赤銅容彫色絵、花に蝶図 小柄、赤銅魚子地、秋草図 下げ緒紺地に茶 柄 親鮫に焦げ茶柄巻き 縁頭、赤銅魚子地高彫色絵、秋草虫図 目貫、赤銅容彫色絵、秋草図 鍔 加賀象嵌 赤銅研磨地平金象嵌、蟷螂図 金着せ切羽)付き。
【コメント】
平安期から南北朝期に掛けて、三条、五条、粟田口を始め、数多くの名門を生み出した山城の地ですが、室町期に於ける京物の代表格と言えば、三条吉則一派です。
銘鑑等で見ると、同銘が鎌倉期より続いていますが、現存作で最も古いものは室町初期、大半は室町中後期以降の作です。
作風は、直刃調、小湾れに互の目交じりが多く、稀に大模様に烈しく乱れた皆焼もあり、彫り物も得意です。
銘は『吉則』、『三条吉則』、『平安城吉則』、『平安城三条住吉則』などと切ります。
本作は、生ぶ無銘で『三条吉則』の極めが付された佳品、寸法一尺二寸四分、身幅の割に寸の延びた平身の小脇差しは、室町前期を下らない作と鑑せられます。
小互の目乱れに湾れ交じりの刃は、刃中小足、葉入り、金筋、砂流し掛かるなど、同時期の応永信国、山村正信、長州顕国辺りを思わせる出来ですが、地に飛び焼き風の湯走り、強く白ける箇所など、同工らしい独特な働きが見られます。
地に少し鍛え肌もありますが、特別保存、時代外装が付いた味わい深い三条吉則です。
