短刀 濃州関住兼定(之定)
(のうしゅうせきじゅうかねさだ)
永正十七年二月吉(一五二〇)
Tanto:Noshu Sekiju Kanesada
古刀・美濃 室町末期 最上作 最上大業物
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:26.7(八寸八分強) 反り:やや内反り 元幅:2.41 元重ね:0.56 穴1
平造り、三つ棟低め。 鍛え、板目肌流れ心で所々強く肌立ち、地沸良く付き、地景入り、白け映り立ち、地鉄概ね良好。 刃文、細直刃調で、刃縁匂い勝ちで明るく冴え、刃中繊細な小足、葉入る。 帽子、直調で先やや掃き掛け返る。 茎生ぶ、先栗尻、鑢檜垣。 銅に金着せハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
【コメント】
和泉守兼定は、孫六兼元と並ぶ美濃鍛冶筆頭で、共に最上作にして最上大業物、『定』の字のウ冠の中を『之』と切ることから『ノサダ』の呼称があります。
年紀作に見る作刀期間は、明応二年(一四九三)から大永六年(一五二六)まで、天文(一五三二~五五)初年頃に没したと云います。
作風は、頭の丸い互の目、互の目丁子刃が主体で、湾れ、矢筈刃、箱刃、尖り刃が交じり、刃縁匂い勝ちで柔らかく締まった作が多く、短刀には、『来写し』と呼ばれる綺麗な直刃も見られ、その鍛えの良さは、関鍛冶中第一位との定評があります。
銘振りは、最初『濃州関住兼定作(造)』と切り、明応十年(一五〇一)頃までは、『定』の字を楷書で切ります。それ以降『之定』銘となり、永正七年(一五一〇)頃に『和泉守』を受領、以降『和泉守(藤原)兼定(作)』と切ります。二字銘も稀に見られますが短刀に多く、年紀作はほとんどありません。 鑢目は刀、脇差しは鷹の羽、短刀は檜垣、茎尻は栗尻ですが、後期晩年作になると、鑢目は全て筋違い、茎尻は尖って入山、剣形風となります。
本作は、いわゆる『来写し』と呼ばれる上品な直刃短刀です。
寸法八寸八分強、経年による研ぎ減り等も少しありますが、如何にも之定らしい匂い出来の明るい柔らかな刃を焼いています。
特筆すべきはその銘振り、前述したように、永正八年(一五一一)以降は、『和泉守兼定作』と切るのが大半、之定研究上、貴重な資料となるでしょう。
最上作にして最上大業物、和泉守兼定の『来写し』短刀、コレクション価値の極めて高い一振りです。