脇差し 長有俊(当麻)(無銘)
(ちょうありとし)
Wakizashi:Cho Aritoshi(Mumei)
古刀・大和 南北朝初期
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:47.9(一尺五寸八分) 反り:1.2 元幅:3.03
先幅:2.30 元重ね:0.62 先重ね:0.49 穴3(内2埋)
鎬造り、鎬高め庵棟低め、中切っ先。 鍛え、板目に杢目、流れ肌を交えて細やかに肌立ち、地色やや黒み勝ち、地沸厚く付き、地景入り、地鉄良好。 刃文、細直刃調で小互の目、小乱れ交じり、刃縁小沸良く付いて匂い深くやや沈み勝ちとなり、ほつれ、二重刃、打ちのけ掛かり、刃中金筋、砂流し掛かる。 帽子、湾れ調で沸付いて二重刃掛かり、先僅かに掃き掛け返る。 茎大磨り上げ、先切り、鑢切り。 銅に金着せハバキ。 時代研磨。 白鞘入り。
【コメント】
当麻鍛冶は、二上山(にじょうざん)の麓、現在の奈良県葛城市当麻にある当麻寺に従属していた鍛冶集団で、鎌倉後期の正応(一二八八~九二)頃の国行を祖とし、以降南北朝期に掛けて活躍、門下には友行、友清、友長、友綱、国清、有俊、有法師などいますが、在銘現存作は僅少です。
同派に於いては、特に無銘極めの作に、直刃調で刃中金筋などの沸の働きが烈しく、地景を交えた板目がうねるなど、一見すると、相州行光辺りに紛れるような作も見られます。
本作は、大磨り上げ無銘ながら『長有俊』と極められた一振り、有俊には二字銘に切るものと、『長有俊』と三字銘に切るものがあり、二字銘には『永仁六年(一二九八)』年紀の太刀があり、三字銘の方を銘鑑では建武(一三三四~三七)頃としています。年代的、銘字の書風の違いなどからして、二字銘を初代、三字銘を二代とする説が有力です。また『長』は、長兵衛尉若しくは長谷部氏の略とも云われています。
作風は、小板目詰んだ鍛えに、直刃調の刃を焼きますが、焼き刃に沿って二重刃、打ちのけ等が目立って掛かる点が特徴であり、当麻物としてはやや異風とも言えるでしょう。
本作は、切っ先やや強く張り、元先身幅の差が少ない勇壮なスタイルから、南北朝初期作と鑑せられます。
細直刃調で小互の目、小乱れ交じりの刃文は、刃縁やや沈み勝ちとなり、ほつれ、二重刃、打ちのけ掛かり、刃中金筋、砂流し掛かる出来で、帽子も沸付いて二重刃掛かるなど、同工らしい作風が良く示されており、地刃も総体的に健全で、大きな疵もありません。真面目な長有俊です。