刀 無銘(伝岩戸一文字)
(でんいわといちもんじ)
Katana:Mumei(Den Iwato Ichimonji)
古刀・備前 鎌倉末期 拵え付き
第六十五回重要刀剣指定品(令和元年)(二〇一九)
探山先生鞘書き有り

刃長:70.6(二尺三寸三分) 反り:1.2 元幅:2.95
先幅:1.81 元重ね:0.61 先重ね:0.44 穴2

太刀拵え(幕末期 全長102 鞘柄共に革巻き風の黒漆塗 総金具、素銅研磨地、無文 太刀緒 茶の裏革 鍔 甘赤銅研磨地丸形、無文、同覆輪耳 丸形同大切羽)付き。

【コメント】
無銘(伝岩戸一文字)の重要刀剣、鎌倉末期に於ける備前一文字の美点が良く示された優品です。
鎌倉期に於ける備前鍛冶の大きな流れは、一文字派と長船派の二大流派であり、一文字派は、以降南北朝期に掛けて、福岡、吉岡、片山、岩戸などの地に栄え、多くの名工を輩出しました。
同派が一文字と呼ばれるのは、茎に『一』の字を切ることに因りますが、 銘には『一』のみ場合、『一』の下に個銘を切る場合、個銘のみ場合があります。
中でも鎌倉末期以降に、備前国岩戸庄、現岡山県和気郡和気町岩戸付近にて鍛刀した一派を岩戸一文字と呼称します。地名からして備前和気鍛冶との関連性も窺えます。
銘鑑等によると、その祖を吉氏としていますが、在銘正真作は皆無、一派では吉家に、『一備州岩戸庄地頭左衛門尉源吉家』銘で、元徳(一三二九~三一)年紀入りの作が残されていることによって、一派の大凡の活躍期が窺えます。
本作は、大磨り上げ無銘ながら、『伝岩戸一文字』の極めが付された一振り、令和元年(二〇一九)、第六十五回の重要刀剣に指定された地刃美しい優品です。
寸法二尺三寸三分、反りやや浅め、しなやかで上品な姿、小板目肌良く詰んだ精良な鍛えは、映り淡く立ち、湾れ調の刃取りで、小丁子、小互の目、尖り風の刃を交えた刃は、焼きの間隔密に詰まり、刃中小足、葉良く入り、金筋、砂流し掛かる出来で、特に地鉄のきめ細かな美しさには、目を見張るものがあります。
図譜には、『変化のある刃文や刃境の景色に加え、取り分け鍛えの精良さが光る一口である。』とあり、探山先生鞘書きにも『匂い口の塩相宜しく、一文字派中、同派と鑑せられる優品也。』とあります。
外装は、幕末期の太刀拵えで、鞘柄共に革巻き風黒漆塗りの渋い作、大変魅力的な岩戸一文字です。





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