太刀 備州長船住元重
(びしゅうおさふねじゅうもとしげ)
Tachi:Bishu Osafuneju Motoshige
古刀・備前 鎌倉最末期
最上作 最上大業物 拵え付き
第六十二回重要刀剣指定品
刃長:75.3(二尺四寸九分弱) 反り:2.2 元幅:3.04
先幅:2.06 元重ね:0.62 先重ね:0.45 穴2
半太刀拵え(幕末期 全長105 柄長24.5 鞘 黒石目地に雲文様入り こじり、責金、鯉口は鉄地、模様、小縁金象嵌、雲の図 足金具、銀地毛彫、雲の図 太刀緒、黒卯の花、深緑、紫の上亀甲 柄 親鮫に焦げ茶柄巻 縁頭、鉄地金象嵌、小縁金象嵌、雨龍図 目貫、金無垢地容彫山形紋図 鍔 鉄槌目地撫角形、金銀素銅布目象嵌、雲龍荒波図)付き。
【コメント】
長船元重の重要刀剣太刀、最上大業物、『貞宗三哲』、長寸で凜然とした姿に、 同工の特色が存分に発揮された貴重な在銘品です。
元重は、長船鍛冶でありながら、兼光や長義とは系統を異にする刀工で、畠田守家の孫、守重(長船長光の娘婿)の子、重真の兄と伝わっており、最上大業物且つ『貞宗三哲』にもその名を連ねる名工です。
作刀期間は、鎌倉末期の正和(一三一二~一七)頃より、南北朝中期の貞治(一三六二~六八年)頃まで及んでいます。故にその造り込みは時代を反映し、切っ先身幅尋常な姿から、切っ先延びた大柄な姿まで見られます。
作風は、板目に杢目交じりの地鉄に流れる様な柾肌が交じり、総体的に肌立ち気味で地景入り、地斑状の肌合いや乱れ映りの出る場合もあります。
焼き刃は、直刃調で、刃中角張る互の目が目立ち、互の目、丁子、片落ち風の刃を交えますが、総体的に逆掛かるのを基本とします。また刃縁から刃中に向かって足、葉が鋭角に入る『陰の尖り刃』は、同工特有の働きです。直調で刃中逆掛かった焼き刃、突き上げ風で尖り心となる帽子などは、同時期の青江鍛冶に近いものがありますが、肌質の違い、刃幅が総体的に広いなどの相違点が挙げられます。
本作は平成二十八年(二〇一六)、第六十二回の重要刀剣に指定された貴重な在銘太刀です。
寸法二尺四寸九分弱、反り深めで身幅、重ねもしっかりとした一振り、下が生ぶ穴で一寸程磨り上がっていますが、ほぼ生ぶの姿を留めた鎌倉最末期と鑑せられる勇壮なスタイルです。
一見して分かるのが、斑状に現れた強い地映り、平地全体が白い霧に包まれたような独特の雰囲気を醸し出しており、角張る刃に逆足入る刃文など、長船系鍛冶ながら、随所に青江気質を窺わせる同工典型的な出来です。
図譜には、『この太刀は、同作中では鍛えが良く錬れて精美であり、刃に角張る刃や逆掛かる刃が見られ、帽子が尖る点に元重の特色が窺える。長寸の凜然とした姿に同工の特色が存分に発揮されており、貴重な在銘の優品である。』とあるように、時代的に同工の太刀は本作のように長寸のものが多いため、ほとんどが大磨り上げ無銘になっており、在銘で残っているものの大半は、短刀、平脇差しです。
在銘品でこれだけの寸法がある元重はかなり貴重かと思われます。幕末期の半太刀拵えと共にお楽しみ下さい。