脇差し 守弘(千代鶴)
(もりひろ(ちよづる))
嘉吉元年八月五日(一四四一)
Wakizashi:Morihiro(Chiyozuru)
古刀・越前 室町前期
第十二回重要刀剣指定品
探山先生鞘書き有り
刃長:32.0(一尺六分弱) 反り:なし 元幅:3.47 元重ね:0.63 穴1
【コメント】
千代鶴守弘の重要刀剣、生ぶ在銘年紀入り、豪壮なスタイルに皆焼風の烈しい出来、極めてコレクション価値の高い逸品です。
越前千代鶴一派は、山城来国安の弟子、千代鶴国安を流祖としたことからこの呼び名があり、同派は南北朝中期の貞治(一三六二~六八)頃から室町期まで繁栄、門下には国安の子とも伝わる守弘らがいます。
作風は、来派の伝統を継承した直刃、稀に烈しい互の目乱れ調の出来もあります。
本作は千代鶴守弘の豪壮な平脇差し、昭和三十九年(一九六四)、第十二回の重要刀剣指定品です。
守弘は、前述したように、千代鶴派の代表工で初、二代があり、初代を応永(一三九四~一四二八)、二代を嘉吉(一四四一~四四)、文安(一四四四~四九)頃としています。
寸法一尺六分弱、身幅ガシッとして、地刃すこぶる健全、寸法に比して身幅が広いので迫力が凄いです。生ぶ在銘年紀入りで穴一つ、『嘉吉元年八月五日(一四四一)』とありますので、二代守弘であることが分かります。二代は藤左衛門尉と称しました。
小板目に柾肌を交えて良く詰んだ精良な地鉄、互の目乱れ主体の刃文は、小互の目、丁子風の刃、尖り風の刃を交え、刃縁荒沸良く付いて匂い深く明るく冴え、刃中金筋、砂流し烈しく掛かり、上半は平地に飛び焼きが多数掛かっています。帽子も先掃き掛けて長く返り、棟及び棟寄りに焼きが入るなど、千代鶴系の出来とは思えない程烈しい出来です。
図譜には、『すこぶる珍品であり、上の出来は末物(室町末期の作)或いは新刀初期作と思われる程に刃縁も鮮やかである。研究資料としても貴珍である。』とあり、探山先生鞘書きには、『幅広で寸詰まりの形態に柾目詰まる肌合い、刃文は盛んに乱れ、上半は飛び焼きを交えて皆焼風を帯びるなど、もはや一類の源流なる来国安の気質はなく、時好(時代の流行)の作風を示したるが注目される小気味良い優品也。』とあります。
二代守弘こと、千代鶴藤左衛門尉守弘の代表作と成り得る名品、同派及び同工研究に於いても、この上なく貴重な現存品となるでしょう。確実に押さえて頂きたい大珍品です。