刀 無銘(伝雲重)
(でんうんじゅう)
Katana:Mumei(Den Unsyu)
古刀・備前 南北朝中期 良業物
第十二回重要刀剣指定品
刃長:71.2(二尺三寸五分) 反り:1.5 元幅:3.14
先幅:2.45 元重ね:0.67 先重ね:0.52 穴3
【コメント】
無銘(伝雲重)の重要刀剣、南北朝中期の凜然とした太刀姿、雲類代表工による見所多い典型作優品です。
雲生、雲次、雲重らの刀工は、鎌倉末期から南北朝期に掛けて、備前国宇甘(うかい)庄、現在の岡山市北区御津(みつ)付近で鍛刀したことから宇甘派、若しくは皆『雲』の字を通字としたことから『雲類』とも呼ばれ、備前鍛冶ながら、長船鍛冶とはその作風を異にする刀工集団です。
作風は、小板目良く詰み、直刃調で匂い口の締まる来風の出来と、直刃に逆掛かる刃を交えた青江風の出来の二様に大別され、地には地斑(じふ)映りと呼ばれる、指で押したような斑(まだら)状の映りが出る作を多く見ますが、刃沸の強い作ではあまり目立ちません。また刃に金筋、砂流し、二重刃、帽子が強く掃き掛けるなど、大和風が強く出る作もあります。
鑢目が大筋違いとなるのは青江風、反りがいわゆる輪(京)反りとなる点は来風、刀姿は雲生、雲次、雲重と時代が下がるに連れて、次第に強くなり、南北朝中期の雲重になると、身幅広く切っ先の延びた豪壮なものが多く見られ、その頃最盛期であった相州伝の影響からか、刃沸が更に強くなる傾向があります。
本作は昭和三十九年、第十二回の重要刀剣指定品、大磨り上げ無銘ながら、『伝雲重』と極められた一振りです。
雲重は、銘鑑等によると、雲生の子とも孫とも云われており、前述のようにその活躍期は南北朝中期、現存する年紀作には文和(一三五二~五六)、貞治(一三六二~六八)、応安(一三六八~七五)があります。
本作は寸法二尺三寸五分、大切っ先で元先身幅の差が少ない南北朝太刀、いわゆる延文貞治姿を示した堂々たる逸品です。
板目に流れ肌を交えて上品に肌立った綺麗な地鉄は、鎬寄りに筋状の映り、乱れ映りが見られ、直湾れ調で、小丁子、小互の目を交えた焼き刃は、刃縁にほつれ、二重刃風の沸筋掛かり、刃中小足頻りに入り、金筋、砂流しが掛かっています。
随所に雲類らしい地刃特徴が良く示されており、地刃健全、寸法充分、姿、バランスも最高です。大変見応えのある素晴らしい雲重です。