刀 出雲大掾藤原吉武
(いずもだいじょうふじわらよしたけ)
Katana:Izumodaijo Fujiwara Yoshitake
新刀・山城
江戸前期 業物
第十八回重要刀剣指定品
刃長:71.3(二尺三寸五分強) 反り:1.5 元幅:3.50
先幅:2.42 元重ね:0.67 先重ね:0.50 穴1
【コメント】
出雲大掾吉武の重要刀剣、堀川国廣門下の名手、同工作中最も華やかな濤瀾風乱れを焼いた豪壮な一振り、紛れもない同工最高傑作です。
出雲大掾吉武は、川手市太夫と称し、三条吉則の末流で堀川国廣門人の平安城国武の子と伝えられる刀工です。初め京で鍛刀しましたが、後に江戸へ移住しています。同工には法城寺正照との合作重要刀剣が残されていることから、堀川一門でありながら、江戸では法城寺一門との交流があったことが分かっています。
活躍期は、延宝(一六七三~八一年)から元禄(一六八八~一七〇四年)まで、元禄七年(一六九四年)没と云います。年紀作はほとんど見ません。
銘振りは順に『平安城住吉武』、『出雲大掾藤原吉武』、『出雲守藤原吉武』と転じ、晩年は『出雲守藤原法哲入道吉武』と銘じました。
作風は、法城寺一門に見るような直刃、直互の目の作が多く見られますが、中には長曽祢虎徹風の数珠刃、越前守助廣風の濤瀾乱れも見られ、前述した重要刀剣にも金象嵌截断銘が入っているように、その斬れ味に於いても定評があります。
本作には年紀がありませんが、図譜にもあるように天和(一六八一~八四年)頃の作、寸法二尺三寸五分強、切っ先延び心で幅広の堂々たる一振りです。
こういった力感溢れる造り込みは、これまでの寛文新刀に代わって元禄前後に見られるようになり、特にこの頃の大坂新刀にまま見受けるものです。
板目に杢目を交えて上品に肌立つ地鉄は、地沸を厚く付け、所々大模様にザングリと肌立ち、濤瀾風互の目乱れを主体とした焼き刃は、湾れ、小互の目、耳形の刃を交えて放胆に焼いており、刃縁の沸匂い一際深く、刃中太い互の目足繁く入り、匂い口すこぶる明るく冴えています。
肌感は堀川物、焼き刃の明るさは助廣を思わせる同工出色の出来映え、直刃調の穏やかな作が多い同工にあって、ここまで華やかで覇気溢れる刃文は見たことがありません。
同工の重要指定品は、前述の合作刀も含め五振りですが、ここまで幅広で豪壮な作は本作以外にありません。
図譜にも『彼の最高作の一本である。』とあるように、流石は新刀重要、鍛えの良さ、健全さ、迫力、重量感、どれを取っても一切隙がありません。
これは狙い目の新刀重要、出雲大掾吉武の最高傑作です。