太刀 盛助(大宮)
(もりすけ)
Tachi:Morisuke
古刀・備前 鎌倉末期
拵え付き(保存刀装具鑑定書付き)
特別保存刀剣鑑定書付き
探山先生鞘書き有り
刃長:66.4(二尺一寸九分強) 反り:2.0 元幅:2.91
先幅:1.69 元重ね:0.58 先重ね:0.41 穴2
打ち刀拵え(江戸期 全長98センチ 鞘 錦布の上に茶の漆塗り、コジリ、栗型、鯉口は四分一研磨地、下げ緒黒 柄 鮫に緑柄巻き、縁頭、銘あり 赤銅石目地据え紋象嵌色絵竹に虎図、目貫、素銅地金象嵌家紋の図 隅立て四ツ目紋と文字紋 鍔 銘長州萩住友次作、鉄地丸形肉彫透金象嵌、銀覆輪、唐草図)付き。
【コメント】
備前大宮盛助の在銘正真太刀、鎌倉末期の同派代表工による余りにも希少な現存作、美しい地刃の鍛えには目を見張るものがあります。
備前大宮派は、山城国大宮猪熊(現京都市下京区大宮町、錦猪熊町付近)の地から備前国へ移住してきた、国盛を祖として始まると伝えており、代表工には『盛景』、『盛助』、『盛継』などがいますが、在銘現存作はほとんど見られません。皆『盛』の一字を通字とし、大振りな二字銘を基本とし、太刀であっても佩裏、つまりは刀銘で切る場合が多く見られます。太刀の刀銘は、豊後行平、古青江恒次、貞次、助次、長船兼光、古三原正廣などにも見られます。
作風は小板目詰んで地斑風の映りや淡い乱れ映り立つ鍛え、匂い口の明るい直刃基調の焼き刃に、小互の目が交じるような地刃の出来を本位としていますので、備前物の中でも雲類に近い雰囲気があります。
同派の活躍期は鎌倉末期から南北朝初期頃までと考えられ、その後は長船派に吸収される形になったと考えられます。
本作は寸法二尺一寸九分強、優美な鎌倉太刀で、余りにも希少な大宮盛助の在銘品、探山先生の鞘書きにもあるように、茎尻は若干詰めていますが、刃区から水影が立っていますので、刃区は生ぶになります。
盛助は国盛の子とも伝わる同派の代表工で、鎌倉末期を活躍期とし、これまで二振り程重要刀剣に指定されていますが、共に刀銘で切っています。本作はやや茎尻近くに銘を切りますが、前述した古青江貞次の国宝太刀なども、二字銘で同じような位置に銘を切っています。
地沸を微塵に厚く敷いた小板目肌は、大変良く詰み、細かな地景を無数に配した素晴らしい鍛えで、鎬から乱れ映りが立っています。湾れ心のある細直刃調の焼き刃は、刃縁に小沸付き、葉、小足入り、物打ち付近は小互の目の直足が入り、匂い口は元から先まで糸を引いたように明るく締まっています。無鑑査研ぎ師の最上研磨を施して間もない状態ですので、地刃明るく冴え渡っています。
鞘書きにも『鎌倉末期に於ける、数少ない大宮鍛冶の在銘品、且つ同派の特色を明示する貴重な作例也。』とあることから、一度重要に挑戦してみる価値はあるかと思います。
付属の外装は保存鑑定書付き、錦布に茶の漆塗り鞘、銀覆輪の掛かった唐草透かしの長州鐔在銘品、赤銅石目地竹虎図の縁頭など、金具類も良質で中々良い雰囲気です。
大宮盛助の余りにも希少な在銘品、鎌倉期の作でありながら、焼き刃が健やかで、染みるような箇所は皆無、寸は短いですが、美しい地刃の鍛えが堪能出来る渋い名品です。