刀 大和国千手院
(やまとのくにせんじゅいん)
Katana:Yamatonokuni Senjuin
古刀・大和 鎌倉後期
第四十六回重要刀剣指定品
探山先生鞘書き有り
刃長:70.7(二尺三寸三分強) 反り:2.0 元幅:3.11
先幅:2.11 元重ね:0.71 先重ね:0.49 穴2
【コメント】
大和千手院の重要刀剣、鎌倉後期を下らない貴重な現存作であると共に、他の大和四派には見られない刃中の多彩な変化を示した優品です。
千手院一派は、大和五派の中で最も歴史が古く、かつて若草山(現奈良県奈良市にある奈良公園東端に位置する山)の西山麓に千手谷と呼ばれた地があり、この付近に実在した僧院に属した一派であったことから、この呼び名が付いたとされます。古伝書などでは、平安後期とも云われる行信、重弘を初祖として挙げていますが、実際は確実な在銘品は見つかっておらず、鎌倉初期になって『千手院』、『大和国住人重行』と銘のある在銘確実な太刀が見つかっています。以降南北朝期までが同派の最盛期に当たり、重永、行吉、行正、力直、定重、力王、国吉、義弘などの名工が輩出されました。また同派からは、鎌倉末期に龍門延吉一派、南北朝期には美濃赤坂千手院一派が分派して、それぞれ繁栄しています。
本作は大磨り上げ無銘ながら、寸法二尺三寸三分強、しなやかで力強い太刀姿を示しており、図譜にも記載があるように、鎌倉後期を下らない千手院鍛冶の希少な現存品です。
地沸を厚く敷いた板目肌が上品に肌立つ鍛えは、綺麗に詰んだ小板目肌を交え、所々波状の肌合いが強く流れて、細やかな地景を配し、白けるような沸映りが立っています。直湾れ調の刃取りで、刃中小互の目、小乱れを交えた焼き刃は、刃沸すこぶる強く、刃縁にほつれ、打ちのけ、二重刃風の沸筋掛かり、所々金筋、砂流しが焼き頭を貫くように掛かって、沸裂け、沸崩れ状を呈し、帽子も火炎風に烈しく掃き掛けて焼き詰めています。姿、造り込み、地鉄の鍛えには、大和物全般の特色を示しながら、図譜にも『焼き刃が細かに複雑に乱れた出来口で、大和の他の四派に紛れることのない千手院派の特色を顕現した佳品』とあるように、大和物らしからぬ多彩な焼き刃の変化が同派の最大の見所になっており、特に無銘極めの作には、こういった優品が見られます。
末永く楽しめる鎌倉期の大和物をお探しであれば、これで決まりです。