刀 (金粉銘)兼延(花押)
(かねのぶ)
(金象嵌銘)初霜
Katana:(Kinpunmei)Kanenobu
古刀・美濃 室町初期
特別保存刀剣鑑定書付き

刃長:72.4(二尺三寸八分半) 反り:1.7 元幅:3.26
先幅:2.24 元重ね:0.79 先重ね:0.55 穴2


【コメント】
濃州國直江志津兼延(金粉銘)作、室町初期を下らない同工の最高傑作、金象嵌截断銘『初霜』は、その美しさと凄まじ斬れ味を物語っています。
鎌倉最末期、美濃國志津に、正宗十哲の一人であった兼氏が来住し、一門を形成、その死後、その門人である兼俊、兼友、兼延、兼次らが同国直江村に移住し作刀を続け、一門は繁栄しました。これらの刀工群を総括して『直江志津』と呼びます。元々大和伝の流れを汲んでいた兼氏が、正宗相州伝を注ぎ込んで完成したのが美濃伝であるため、直江志津一門の作風も、師伝を継承した覇気に富んだ作が多く見られます。加えて刃味も優れています。
本作は元先身幅広く、切っ先力強く延びた雄壮なる南北朝姿を示しており、尖り風の刃を交えた烈しい互の目乱れを焼いています。地肉、刃肉とも全く減らしておらず、驚く程の健全さが保たれています。直江鍛冶の全盛期は、南北朝初期建武(一三三四~三六年)頃から室町前期嘉吉(一四四一~四四年)頃までと云われ、本作は姿、地刃の出来からしても応永(一三九四~一四二八年)を下らない作と鑑せられます。
金象嵌截断銘の『初霜』は、正に初霜の如く柔らかく美しい地沸、刃沸が微塵に厚く付き、白く明るく冴えた地刃を評したものであり、加えて本刀が最上の斬れ味を示したことから、名付けられたものです。美しさと実用を兼備した、欠点のない直江志津兼延の名品、最上の金無垢二重ハバキには、三つ雁金の透かし紋が入っています。



