脇差し (金象嵌銘)景光(長船)
(かげみつ)
本阿(花押)(光一)(十七代本阿弥光一)
Wakizashi:Kagemitsu
古刀・備前 鎌倉末期 最上作 拵え付き
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:54.7(一尺八寸強) 反り:1.4 元幅:2.68
先幅:1.89 元重ね:0.61 先重ね:0.41 穴2(内1埋)
上脇差拵え(江戸後期作 全長81.5 鞘 黒の呂鞘 下げ緒茶 柄 親鮫に土色柄巻き 縁頭、銘後藤光孝 金無垢魚子地平地片切彫、波に笹図 目貫、金無垢地容彫、二匹獅子図 鍔 赤銅艶消し地変わり木瓜形、金平象嵌、菊紋と紗綾文様図 銀地金着せ切羽)付き。
【コメント】
景光は、長光の子で、長船派の三代目を継承、国宝太刀『小龍景光』、国宝短刀『謙信景光』など国宝三口、重要文化財十三口、重要美術品二十口を数える長船派の筆頭鍛冶です。
活躍期は、鎌倉末期の嘉元(一三〇三~六)から南北朝最初期の建武(一三三四~三六)頃までとされています。
作風は、長光の前期作程、華やかな作は僅少で、直刃調の穏やかな刃取りに、小模様の丁子、互の目を交える出来が多く、短刀には片落ち互の目、角張った互の目が逆心となった鋸(のこぎり)状の刃も見られます。景光の刃には、基本的に逆心あるのが見所で、鍛えの精良さに於いては、長光を凌ぐものがあります。
銘は太刀、短刀共に『備州長船住景光』、『備前国長船景光』など長銘が多く、二字銘は僅少です。 本作は、寸法一尺八寸強の脇差しですが、元来小太刀であったものを少し磨り上げたスタイルです。 茎には、本家十七代、本阿弥光一による、『景光』極めの金象嵌銘が入っています。
本阿弥光一は、江戸後期の鑑定家、本阿弥分家筋の生まれで、光敬の嫡男、後に本家十六代光久の養子となり、十七代目を継承、折紙は、寛政元年(一七八九)~文政八年(一八二五)まで、同年没と云う。
小板目肌がやや沈み勝ちに良く詰んだ精良な地鉄は、所々流れ心に強く肌立ち、地色明るく、地斑状の映り鮮明に立ち、小丁子に小互の目、小乱れ交じりの刃は、刃縁匂い勝ちに小沸付いて明るく潤み心となり、刃中小足、葉繁く入っています。地に鍛え肌、緩みも少しありますが、鉄の美しさ、刃の柔らかさ、刃中の細やかな足の入れ方等に、長船筆頭鍛冶の高い技量が窺える佳品、付属の外装は、江戸期の上質な作です。