脇差し 備州長船康光
(びしゅうおさふねやすみつ)
応永廿三年二月日(一四一六)
Wakizashi:Bishu Osafune Yasumitsu
古刀・備前 室町初期
特別保存刀剣鑑定書付き
刃長:32.2(一尺六分強) 反り:なし 元幅:2.59 元重ね:0.56 穴1
脇差拵え(江戸末期~明治 全長50 鞘 金茶梨地に黒線横巻、鯉口下三寸、一分刻み黒漆塗り 柄 親鮫に深緑蛇腹巻 総金具 銀地波文図 鐔小柄笄も同作 目貫、銀地容彫花橘図)付き。
【コメント】
室町初期の応永(一三九四~一四二八)頃は、南北朝争乱期と室町中期以降の戦国期の間に訪れた平和な時期でもあり、長船鍛冶達は、古名刀を再現しようと試み、後の末備前とはまた異なる品位の高い作を多く残しています。これらを総称して応永備前と呼びます。
応永備前の作風は、互の目丁子を主体とした華やかな乱れ刃、『応永杢』と呼称される杢目が目立って肌立つ鍛え、直調の映りが多い点などが特徴ですが、中には鎌倉期の長船物、又は青江鍛冶を思わせる穏やかで上品な直刃もあります。
本工の康光は、応永備前鍛冶の代表工、右衛門尉と称し、同時期の盛光、師光と共に『応永の三光』とも呼称され、長船鍛冶中興の祖としても名高い名工です。
本作は寸法一尺六分強、身幅の割に寸の延びた姿は、この期に於ける典型的な小脇差しのスタイルで、ハバキ下付近が少し減っており、茎も少し荒れ気味ですが、応永年紀入りの佳品です。
板目に杢目を交え、所々渦巻き状の応永杢が顕著に見られる地鉄は、刃寄り直調の映り立ち、小互の目丁子乱れを主体に、小丁子、小乱れを交えて所々逆掛かる焼き刃は、刃縁匂い勝ちで刃中小足、葉が良く入っています。
応永備前の乱れ刃にあって、やや穏やかな部類の刃調ですが、応永備前筆頭鍛冶、右衛門尉康光の高い技量が良く示されています。
総金具銀地波文図一作金具を使用した小さ刀拵えも付属しており、小柄笄もピシッと入っています。 立派な時代外装と共に、末長く楽しめる応永備前康光です。