刀　無銘(伝志津)
（でんしづ）

Katana:Mumei(Den Shizu)

古刀・美濃　鎌倉末期～南北朝初期　最上作
特別保存刀剣鑑定書付き

刃長：65.6(二尺一寸七分弱)　反り：1.3　元幅：2.62
先幅：1.74　元重ね：0.53　先重ね：0.42　穴2

鎬造り、鎬高め庵棟低い、中切っ先。　表裏共に棒樋を茎途中で掻き流す(地や茎に添え樋の痕跡有り)。　鍛え、杢目に板目、波状の流れ肌交じり、地鉄やや黒みを帯び、地沸厚く付き、地景繁く入り、地鉄良好。　刃文、小互の目乱れ主体で、尖り風の刃、小乱れ、湾れを交え、刃縁烈しく沸付いて明るく冴え、一部やや沈み勝ち、刃中金筋、砂流し頻りに掛かる。　帽子、湾れ込んで強く沸付き、先大丸風で烈しく掃き掛け僅かに返る。　茎大磨り上げ、先切り、鑢勝手下がり。　銅に金鍍金二重ハバキ。　時代研磨。　白鞘入り。　

【コメント】
志津兼氏は、大和国手掻派の出身で、初め『包氏』と銘じ、鎌倉末期、相州正宗門人となり相州伝を会得したと云います。南北朝初期頃に美濃国志津(現岐阜県海津市南濃町志津)の地に移住、『兼氏』と改め、志津三郎と称しました。この地で大和伝に相州伝を融合した『美濃伝』の基礎を築いた名工です。
御物一口、重要文化財六口、重要美術品九口を数えますが、在銘確実な作は僅か数振りで、志津と言えば、大半が無銘極めとなります。
『正宗十哲』の一人であり、その中でも特に師風を良く継承した名工として誉れ高く、実際志津極めの作には、正宗と鑑せられる作も幾つか見られます。正宗との相違点は、鍛えに板目が流れるなどの柾心がある点、互の目が連れる刃や尖り風の刃が交じる点、帽子に丸みがあって、大丸風で返りが短く、時には先が焼き詰め風となる点などが挙げられます。
本作は、寸法二尺一寸七分弱、大磨り上げ無銘ながら、『伝志津』の極めが付された佳品です。
杢目に板目、波状の流れ肌交じりの地鉄は、地景繁く入り、小互の目乱れ主体で、尖り風の刃、小乱れ、湾れを交えた焼き刃は、刃縁烈しく沸付いて明るく冴え、一部やや沈み勝ち、刃中金筋、砂流し頻りに掛かる出来で、帽子も先が大丸風で、烈しく掃き掛け僅かに返っています。
腰元の刃がやや沈んで眠い感じですが、中程から帽子に掛けて、特に刃中金筋、砂流しがうねるように幾重にも連なる様子や、光りの強い刃沸は、師に比肩するものがあり、大きな見所です。
しなやかな造り込みで、且つ樋が茎まで通っていますので、手持ちズシッと重い刀ではありませんが、研ぎ減っているわけではなく、元からこういったスタイルです。
美濃相州伝とも言うべき地刃の出来、豊富な沸の変化からして、志津の極めは正に妥当、登録証及び鑑定書も近年のものです。大変生ぶい志津兼氏です。